大学入学を機に実家を出て一人暮らしを始める層が毎年一定数いるため、大学生向けの賃貸住宅市場は大きなマーケットといえるでしょう。
大学生をターゲットにした不動産投資には、マーケット規模の大きさをはじめとするメリットもありますが、看過すると致命的な痛手ともなり得るデメリットもあります。
そこで、本記事では大学生をターゲットにした不動産投資のメリットとデメリットについて解説します。
大学生をターゲットにした不動産投資とは?
不動産投資を行うに当たって、大学生をターゲットとして投資エリアや投資物件を選ぶというのも選択肢の一つです。
大学生をターゲットにした不動産投資についての前提として、まずは以下2点を理解しておきましょう。
大学生がメインターゲットとなるエリアとは?
関東圏で大学生がメインターゲットとなるエリア(学生街)は、高田馬場(東京都新宿区)や多摩センター付近(東京都多摩市)、つくば(茨城県つくば市)といったエリアが挙げられます。
いずれにおいても大学や専門学校が周辺にあり、学校の近くに家を借りて一人暮らしをしたい学生のニーズを満たせるエリアといえるでしょう。
学生街の特徴としては、大学や専門学校から近いことや賃料が比較的安価なワンルームタイプの物件、コストパフォーマンス重視の飲食店の密度が高いことなどが挙げられます。
学生が多いことから、エリア全体が学生向けになっているというのが大きな特徴の一つです。
不動産投資では顧客ターゲットを描くことが重要
不動産投資において入居者募集や室内のバリューアップ工事等の投資判断を行う際には、どのターゲットに訴求するかという点が最も重要な視点の一つといえます。
訴求すべきターゲットが定まっているからこそ、ターゲット像から逆算することで最も効果的な施策を講じることができるためです。
メインの顧客ターゲットがどのような層(大学生、単身の社会人、ファミリー等)で、その層からはどのようなニーズがあり、そのニーズを満たすためには具体的にどのような施策を講じるのが最も合理的かという流れで投資判断を行うことが重要です。
大学生を顧客ターゲットとするのであれば、そのエリアの大学生像を具体的に描き、彼らが住まいに対して求めるものは何かということを考えるのが得策でしょう
大学生をターゲットにした不動産投資の3つのメリット
大学生をターゲットにした不動産投資のメリットは以下の3つです。
安定的な賃貸需要
学生街においては、大学が存在する限り大学生からの安定的な賃貸需要が期待できるでしょう。
不動産投資は賃料を払ってくれる入居者がいてはじめて完成する投資スキームであるため、安定的な賃貸需要があることは大きなメリットといえそうです。
顧客ターゲット像を描きやすい
不動産投資では、顧客ターゲット像を描き、顧客ニーズを想定することが重要です。顧客ターゲット像を描きやすいことで以下3つの恩恵を受けられるでしょう。
・入居者募集時の条件設定をしやすい
・室内設備に顧客ニーズを反映させやすい
・入退去サイクルを読みやすい
そのエリアで賃貸住宅を探す大学生の予算はどのくらいが相場なのか、礼金等の初期費用はどの程度まで出せるのかといった条件面での相場データを入居者募集時に活用することで募集戦略を立てやすくなります。
室内設備に顧客ニーズを反映させるというのは、音大生をターゲットとする場合に室内を防音仕様することで楽器演奏を可能としたり、絵画や彫刻などの芸術活動を行う大学生をターゲットとする場合に床材や壁紙を傷・汚れに強い素材にしたりするといったことです。
顧客ターゲットが絞られているのであれば、室内設備を狙った顧客ターゲットに特化した仕様にするのも賢明な選択肢の一つです。
一般的な大学生の入退去サイクルとして、入学や拠点となるキャンパスが変わるタイミングで新居に入居し、卒業のタイミングで退去するというサイクルが想定できます。
現入居者の所属学部や入居開始時の学年から計算することで、おおよその退去時期を見積もることもできるため、投資計画を立てやすくなることにも繋がるでしょう。
大学生協が物件紹介をしてくれる可能性がある
生協とは、生活協同組合の略称で、大学生協では所属学生向けの賃貸住宅を紹介するサービスを行なっていることもあります。
大学生協に協力してもらうことで、部屋探しをする大学生の目に触れるチャンスが多くなるため、幅広い募集活動をすることができるということです。
大学生をターゲットにした不動産投資の3つのデメリット
大学生をターゲットにした不動産投資のデメリットは以下の3つです。
キャンパス移転による大打撃のリスクがある
顧客ターゲットを大学生のみに絞りすぎると、大学生からの賃貸需要がなくなったときに借り手が見つけられず、賃貸経営上の大打撃を受けるリスクがあります。
大学生からの賃貸需要がなくなるリスクが高いのは、特定少数の大学のみに入居者を依存している場合でしょう。
大学を中心に街全体が栄えているエリアにおいては、大学生に依存した賃貸経営になっている傾向があると考えられます。
郊外にある学生街では、キャンパスの都心回帰によって多くの賃貸需要が失われたことでしょう。
大学生をターゲットにした不動産投資をする際は、賃貸需要を見込んでいる大学のキャンパスが移転する可能性がないかを事前に確認しておくことが重要といえそうです。
不動産投資をするうえで顧客ターゲットを絞るのは賢明なことですが、特定少数の層に絞りすぎたり依存したりするのは危険な場合があるため注意が必要です。
長期入居が見込めない
大学生が同じキャンパスに通うのは長くても6年間(医学系の場合や同じキャンパス内の大学院に進学する場合)、一般的には4年間でしょう。
3年生になったタイミングでキャンパス移転がある場合は、2年間しか同じキャンパスに通わないということもあり得ます。
大学を卒業してからも同じ物件に住み続けるという場合もあり得ますが、卒業後に就職を迎えて生活拠点や生活水準が大きく変わることがあるため、大学生は卒業と同時に退去する場合の方が多いでしょう。
不動産投資上、コストの観点から入退去は少ない方が経済的であるため、長期入居が見込めない大学生をターゲットにした不動産投資では入退去費用がかさむことが想定されます
価格競争になりやすい
大手不動産ポータルサイトSUUMOが発表したデータによれば、大学生が一人暮らしをする際に最も重視した項目は、「家賃」が圧倒的に最も多く全体の46.5%で、二番目に多い「通学時間・学校までの距離」(19.7%)の倍以上も多いという結果が出ています。部屋探しで決定要因になった条件でも、「家賃が安かった」という項目が最も多い回答として挙がっています。
大学生は賃料の安さを最重要視する傾向が強いことから、学生街の賃貸住宅においては価格競争になることが考えられるでしょう。賃料の安さで競争が行われると、入居者を見つけるために賃料を下げざるを得ず、当初の想定よりもキャッシュフローが悪化するという事態にもなり得ます。
まとめ
大学生をターゲットにした不動産投資においては、安定的な賃貸需要が見込めたり、顧客ターゲットが明確であることから不動産投資上の戦略を立てやすかったりするというメリットがある一方で、特定少数の大学に依存してしまうことで大きな打撃を受けてしまうことも考えられます。
顧客ターゲットは絞りすぎず、広げすぎずというバランス感覚が求められるといえそうです。
なお、本記事における解説情報はあくまで一般論であり、個別具体的な考え方や手法は投資物件によってケースバイケースです。
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