2025年4月1日、三井住友信託銀行の完全子会社だった「三井住友トラストL&F」が、コンコルディア・フィナンシャルグループ(以下、コンコルディアFG)と三井住友信託銀行の共同出資会社として再編され、新たに「L&Fアセットファイナンス」として新たなスタートをきりました。
前身の「三井住友トラストL&F」はノンバンクとしての強みを活かし、銀行が敬遠しがちな築古一棟物件や既存不適格物件などに対しても、独自の融資基準で多くの不動産投資家を支えてきました。一方、コンコルディアFGは横浜銀行、東日本銀行を中核とする金融持株会社で、中でも横浜銀行は神奈川県と東京都の地盤をメインとして地銀トップクラスの地位を確立し、また東日本銀行も首都圏を中心に中小企業向けの金融サービスを提供し、地域経済の発展に貢献してきました。
今回ノンバンクの「三井トラストL&F」が地銀グループトップのコンコルディアFGと手を組んだことは、不動産投資の融資動向に変化をもたらす可能性があり、不動産投資家においてもその動向は見過ごせないのではないでしょうか。
このコラムでは、L&Fアセットファイナンスの誕生が不動産投資の融資市場に与える影響と、投資家が取るべき行動について考えてみます。
再編のポイント

今回の共同事業化で誕生したL&Fアセットファイナンスの概要を一覧にまとめてみました。

冒頭に述べた通り、これまで三井住友トラストL&Fは、住宅ローンやアパートローン、不動産担保ローンなどを中心に事業展開してきました。アパートローンでは、独立開業間もない方や申告所得の少ない方など幅広い顧客層に対して、既存不適格物件(建ぺい率・容積率・接道、等)や築年数の経過した1棟アパート・マンションへの融資にも応じてきた背景があり、不動産担保融資に特化した専門知識と長年の経験によって得たノウハウという強みを持っています。
一方、親会社の三井住友信託銀行は信託業務を強みに不動産取引において高い専門性を持つ金融機関として、またコンコルディアFGは、横浜銀行・東日本銀行などを傘下に持つ地域金融グループとして、各々の強みを活かして地位を確立してきました。
今回の共同事業化では出資比率に大きな変化があり、コンコルディアFG85%、三井住友信託銀行15%と立場が逆転しました。今後はコンコルディアFGが不動産担保融資の拡大を目指し、主導権を持つことが予想されます。ちなみにコンコルディアFGは、6月の株主総会で承認が得られれば、早ければ10月にも「横浜フィナンシャルグループ」へ社名変更を予定しているようです。グループの中核である横浜銀行を社名に打ち出す事によって、地銀トップとして首都圏における知名度を活かしながら、地域のニーズに寄り添った展開へと変化していくのではないかと考えています。
従って、今後L&Fアセットファイナンスの顧客戦略も横浜銀行が得意とする首都圏の地域ニーズに寄り添った展開へと変化していく可能性があり、事業内容や融資市場にも影響があると見られ、その動向を注視していく必要があると考えています。
不動産投資家への影響 - Takakuwa’s Eyes

L&FアセットファイナンスのコンコルディアFGへの参画は、現在のところ融資条件や審査基準に大きな変化はないものの、中古物件の融資において大きな意味があると考えています。今後の経営体制の変化によっては、影響が出ることも視野に入れておくべきでしょう。
中長期的に見ると、以下の2点に注目しています。
① 地域密着のスピード感と信託の専門性の融合
コンコルディアFGの中核を担う横浜銀行は元々不動産投資に積極的な立場を取っており、共同事業化によってコンコルディアFGの営業ネットワークが加わることによって、融資ノウハウの共有化が進むことが期待されると考えています。
コンコルディアFGが主導的な立場になることで、より銀行的なリスク管理の視点が強まり、これまで積極的な融資対象としていた築古物件に対して審査基準、融資期間や金利の条件が厳しくなる可能性もありますが、逆に銀行では評価されづらかった築古物件に対して、より柔軟な審査が受けられたり、新たなローン商品やスキームによって融資が受けやすくなることで、投資戦略の幅が広がる可能性もあるでしょう。
② LTV(Loan to Value)や物件評価方法の変化
前身の三井トラストL&Fのノンバンクとしての柔軟な審査基準と銀行系の信用力が合わさることによって、LTV(融資比率)や担保評価が緩和され、融資規模の拡大が見込める可能性があります。
一方で融資基準が厳格化されれば、節税効果を狙った投資を検討している富裕層投資家の場合、収益性や実体経済との乖離が指摘され、今後の融資条件が厳しくなることもあるかもしれません。
あるいは、今後L&Fアセットファイナンスがローン商品の見直しなどで縮小していく局面になった場合、同社を利用していた投資家が足切りされる可能性もあります。今すぐ恐れる必要はありませんが、視野に入れておいても良いかもしれません。
いずれにせよL&Fアセットファイナンスはカイロスマーケティングの最有力の融資先として投資家に提案していますので、引き続き融資動向を注視してまいります。
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新たな金融リソースとして、情報収集しよう

L&Fアセットファイナンスの誕生は、人口減少時代に備えて双方が持つ顧客層を相互に輸送することによって、地銀・信託どちらか一方だけでは対応しきれなかったニーズに応える“ハイブリッド型金融機関”として新たな金融リソースとなっていくでしょう。
前身の「三井住友トラストL&F」時代から融資を受けてきた投資家は、融資動向における変化の兆しとして、今後の融資戦略を見直したり、新たな選択肢として中長期的な視点でその動向をチェックし情報収集していく必要があると考えています。
物件選定だけでなく、どの金融機関から融資を受けるのかも重要です。カイロスマーケティングでは、投資家の目的に合わせて融資先の金融機関をご提案しています。金融機関の攻略に関するセミナーも適宜開催しておりますので、ぜひご参加ください。なお、具体的な金融機関のご提案は個別相談で承っておりますのでご活用いただければと思います。