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コラム#170 フジHD騒動から学ぶ、企業における「不動産事業」の在り方とは

高桑 良充
Kairos AI Co.,Ltd. CEO

年間 1,000件以上の案件の相談に乗り、仕入れる物件すべてを自身の目で見て買付、商品開発にも積極的に関与。物件の適正化を図り商品化するのは創業以来変わらず自身で行っている。
投資家に対して不動産賃貸事業のスタートをサポートし、その後運用・管理・最終的に売却・建替えまでの全てのステップを一貫して自社でフォローできる体制を構築。
2021年・2022年「楽待」セミナーお問合せ数 日本一を獲得、また2023年自身の著書「不動産投資の教科書」を出版。

近年、不祥事が続き、何かとメディアを賑わせているフジテレビですが、親会社にあたるフジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)の株主総会(2025年6月実施)では、保有している不動産事業の在り方についての議論が話題になりました。本業であるメディア事業の赤字を、不動産事業で得た収益が補填している形となっている点について、株主の一部から「不動産事業を切り離し、メディア事業に注力すべきである」との提案が出され、議案は否決に終わったものの、企業における不動産事業の側面を浮き彫りにしました。
一方で、2025年に入ってから株価は上昇を続け、株主総会後の2025年7月半ばには約2倍超まで高騰しており、不動産事業の切り離しが否決されたことは、投資家にとってプラス材料になった可能性があるのではないでしょうか。

このように、不動産事業がコアとなる事業ではないものの、本業の赤字を補填しながら、会社経営がなされているケースは珍しくなく、これまで企業が漫然と保有してきた不動産の在り方が、経営戦略上の重要なテーマであることを示唆していると考えられます。

今回のコラムでは、企業における不動産事業の在り方とその役割の重要性について考えてみたいと思います。

フジHDの事例が示すもの

今、フジHDに何が起きていて、何が課題なのでしょうか。

まず始めに、フジHDが保有する事業を改めて整理していきましょう。
フジHDは、放送事業を中心とした「メディア・コンテンツ」、「都市開発・観光」、「その他」の3つの事業セグメントで構成されており、事業面では関連会社をはじめ、フジサンケイグループ各社と連携して幅広く事業を展開しています。

続いて、直近5年間の業績を振り返っていきます。

有価証券報告書の過去5年間の各セグメントごとの売上高、営業利益、資産、売上高営業利益率を見ると、「都市開発・観光事業」の営業利益および売上高営業利益率は順調に伸びている反面、「メディア・コンテンツ事業」は2022年3月期以降は営業利益および売上高利益率ともに減少に転じ、2025年3月期にはマイナスに陥っています。

コアとなる「メディア・コンテンツ事業」は、デジタルコンテンツ配信の普及によって、従来の放送事業による広告収入が減少していることから近年は苦戦を強いられています。特に、2025年3月期には不祥事や社会的な事象によってスポンサーのCM見合わせが相次いで発生し、大幅に広告収入が減少しました。それらを補完する形で、デジタル配信や配信広告の需要が伸び、新たな広告収入源となっており、事業の安定化に貢献しつつありますが、新たなデジタル戦略やコンテンツ制作への投資が急がれている状況ではないでしょうか。

一方で、「都市開発・観光事業」の伸びは特に顕著で、インバウンド需要の高まりやコロナ禍を経て、ホテル事業の業績が回復し、また保有しているレジャー施設開発も進んでいることも大きく寄与していると考えられます。また(株)サンケイビルを中心に、従来より都市部に多くのオフィスビルやレジデンスを保有しているだけでなく、通販市場の拡大によって物流施設やデータセンターへの需要も増えるなど、事業のポートフォリオを拡充しています。

「その他の事業」においては、先の2つのセグメントと比較すると規模は小さいものの、動産リース・商品販売やソフトウェア開発、ITシステムの構築、将来的な成長を見据えた新規ビジネスの開拓などを手掛けており、グループ全体における役割は大きいと言えるでしょう。

これらのことから、フジHDの現状はコア事業である放送事業の不振から、デジタルコンテンツ配信事業を強化しつつも、まだ途上にある中で、不動産事業が安定した収益源として確固たる柱として全体を下支えしている構図であることが分かります。

先の株主総会で「不動産事業の切り離し」が否決された理由は、投資家が「目先にある安定した収益源を失うリスク」を、変革が求められるメディア事業の将来的な可能性よりも重視したことが大きな要因であると見ています。その結果、安定した収入基盤を確保しながら、その収益を元にメディア事業の変革が進むことへの期待が高まり、株価が急騰したのではないでしょうか。

企業における不動産事業の多角的価値

フジHDの事例は、企業における不動産事業が持つ2面性を示唆しています。

  1. 「生産資源」としての不動産
    企業における「生産資源」は、オフィス、工場、店舗など、本業を遂行するために不可欠であり、それらを最適に配置・活用することによって事業を最大限に効率化させ、企業競争力を強化することに繋がります。

  2. 「戦略的投資資産」としての不動産
    事業ポートフォリオの一部として、本業とは別に「収益の獲得」を目的として不動産を保有することで、企業のリスク分散と収益安定化への貢献が期待できます。

フジHDにおける不動産事業は、まさにこの「戦略的投資資産」としての役割を強く果たしていると考えられます。
従って企業が不動産事業を保有し続けるか、あるいは切り離すかという選択は、単なる資産の増減ではなく、「本業をどこまでリスクに晒すのか」「将来の成長に何を最も優先するのか」という経営戦略の根幹に関わる判断になるのです。

企業が保有する「不動産」の最適解を導くカギ「CRE戦略」

では、企業が不動産を保有することは、経営戦略上どのような価値をもたらすのでしょうか。

不動産を保有するメリットは大きく4つあります。

  1. 財務の安定化とリスクヘッジ
    不動産からの安定的なキャッシュフローによって、本業の業績変動リスクを軽減し、本業以外の収益源を安定的に確保することができます。また不況時や事業拡大のための先行投資期においても、企業の資金調達の支えとなります。

  2. 金融機関の評価向上
    資産価値が高い不動産は、企業の信用力を高め、強力な担保となるため銀行から融資を受けやすくなります。

  3. 税務上のメリット
    法人で不動産を保有すれば節税になり、法人税率の優位性や、減価償却費の計上による課税所得の圧縮、本業の赤字と不動産事業の利益との損益通算など、法人ならではの税制上のメリットを活用できます。

  4. 資産価値の保全と形成
    不動産はインフレに強く、また長期的に見て資産価値が安定しやすいため、バランスシートを強化に繋がります。

これらのメリットを享受できるよう、企業は不動産を単なる「入れ物」としてだけでなく、「戦略的な資産」として経営戦略と一体で捉え、企業価値の最大化できるよう活用するための「CRE(Corporate Real Estate)戦略」が重要です。

まず財務状況から現状を分析し、安定的なキャッシュフローの確保に重点を置く「守り」の戦略、本業の成長や新規事業への資金調達のための「攻め」の戦略など、企業が目指すビジョンに合わせた戦略を立てていきます。
すでに不動産を保有している場合は、事業への影響を分析することによって、潜在的な課題を洗い出し、収益性の改善を図ります。複数の不動産を保有している場合は、ポートフォリオの最適化し、保有資産の資産効率を上げることを検討していく必要があります。

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不動産は、経営戦略の要になる

今回のフジHDの事例から分かるように、企業における不動産は、単なる「資産」ではなく「経営戦略の要」であり、万が一本業が不振に陥った場合も業績を立て直していくための「土台」として、不動産事業は重要な役割を果たしてくれます。
今回の株主総会で不動産事業の切り離しが否決された背景には、この安定的な収益源を失うことのリスクが、メディア事業の「選択と集中」による将来的な可能性を上回ると判断された面が大きいからではないでしょうか。

しかし、財務状況や経営状況を戦略的に分析し、投資エリアや不動産を選定することなく、ただ闇雲に不動産を保有することはおすすめできません。

カイロスマーケティングでは、最適に不動産を活用していただけるよう、不動産投資のプロとして、企業の経営活動をデータで読み解く重要な指標「財務3表(賃借対照表(B/S)・損益通算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/F))」をベースに最適な資産形成プランをご提案し、投資エリア・不動産の選定、物件の管理、将来的な出口戦略まで、トータルでサポートさせていただきます。

不動産投資セミナーも適宜開催しておりますので、ぜひご参加ください。なお、具体的な金融機関のご提案は個別相談で承っておりますのでご活用いただければと思います。

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