2025年7月に国税庁が発表した路線価(2025年1月1日時点)によると、全国約32万地点の標準宅地の平均が前年比で2.7%のプラスとなり、4年連続で上昇を記録し、上昇率は現行方式が導入された2010年以降で最大となっています。路線価の上昇の背景には、インバウンド需要の回復、ホテルや住宅の建設ラッシュ、再開発の活発化などがあると思われます。
このニュースは、一見「日本全体の地価が上がっている」という楽観的な見方を招きがちで、実際はその恩恵は地域によって大きく異なっており、不動産投資においては「平均値の罠」に陥らないよう冷静に判断することが不可欠です。
そのような中、東京都心から国道16号線付近までの首都圏郊外エリアは、投資家にとって新たな成長機会を秘めていると考えています。
今回のコラムでは、路線価の具体的な動向から、先に述べたエリアがなぜ不動産投資に適しているのか、その理由と戦略について解説します。
路線価の上昇を牽引する3つの要因

近年の路線価上昇は、主に以下の3つの要因を持つ地域で顕著です。
1. 国際的な観光地への需要の拡大
北海道の富良野やニセコなどの国際リゾート地が代表的な例です。

2. 大規模プロジェクトによる地域変革
特定の企業誘致やインフラの整備によって、周辺地域に新たな雇用と人口流入がもたらされ、地価を大きく押し上げるドライバーになるケースも見受けられます。

3. 都市部の魅力向上と利便性の追求
特に東京都心部や再開発エリア(中央区銀座、台東区浅草、豊島区池袋など)は引き続き高い上昇率を示しています。

一方で、路線価が横ばいしている都道府県はないものの、下落している県が12県あることも注意したいところです(前年より4県減少)。
具体的には、新潟県、岐阜県(上昇地点もあるものの、全体として下落傾向)、鳥取県(鳥取市栄町など)、和歌山県、福島県(南会津町など)、奈良県(桜井市など)が挙げられ、特に能登半島地震の被害を受けた石川県、富山県、新潟県の一部地域では、災害による地価下落を反映した「調整率」が設けられるなど、復興の遅れが懸念される石川県輪島市などは下落傾向にあるようです。
これらのことから、都市部や観光地、大規模再開発が進む地域や企業誘致によって人口流入が見込める地域は上昇が顕著である一方、人口減少や高齢化が進む地方の郊外、産業の衰退が見られる地域は上昇が見られないまたは下落傾向にあると言えるでしょう。
このように、全国平均の上昇とは裏腹に、地域ごとの経済・開発状況や人口動向によって路線価の動向にも格差が生じており、平均値だけを見て「日本全体の地価が上がっているから投資チャンスである」と安易に判断してしまうことは、非常に危険な誤解を招く可能性があります。
一時的な上昇要因、そこに潜む下落リスク

現在の路線価上昇を牽引している要因の多くは、「インバウンド需要」と「再開発」であり、先に述べた地域にも下落リスクを考慮する必要があります。

不動産投資においては、インバウンド需要や再開発によって一時的に上昇し外部要因に左右されやすい地域への投資は、売却益(キャピタルゲイン)を狙う短期的な投資として魅力的ではあるものの、中長期的に賃料収入(インカムゲイン)を狙った投資のように持続的かつ安定的な投資には不向きだと考えられます。
首都圏郊外の主要市部の路線価動向

一方、冒頭で触れた「都心から国道16号線付近までの首都圏郊外エリア」も、地価上昇が続いており、都心部の路線価上昇が継続する中で、その影響が波及した形となっています。
特に、以下の3つの点が共通した傾向であると考えられます。
- 都心部からの人口流入
都心部のマンション価格の高騰が続く中、より安価でより広い住環境を求める人達の需要が増加 - 駅周辺の再開発
ターミナル駅周辺で、商業施設やタワーマンションが建設され、再開発が進む - 交通利便性の高さ
首都圏の主要駅に直結する路線が多く、都心へのアクセスが良い
また国道16号線が包括する地域についてもまとめておきましたので、参考にしてみてください。

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個別エリアの路線価の動向と背景
カイロスマーケティングが投資エリアにご提案する町田市、相模原市、八王子市、松戸市は、まさにこの国道16号線沿線の代表的な都市であり、都心へのアクセスと郊外の住環境を両立できる点が強みとなっています。
以下に、各市ごとの具体的な動向を見ていきましょう。
- 東京都町田市
町田駅周辺は、商業地・住宅地ともに堅調な上昇が続いています。JRと小田急線のターミナル駅である町田駅は都心へのアクセスもよく、駅周辺には大型商業施設も多く、利便性も高いことから、南多摩地域の中心的な役割を担っています。 - 東京都八王子市
八王子駅は、JR中央線・横浜線・八高線が乗り入れており、多摩地域の交通の要です。八王子駅周辺では、再開発による商業施設やタワーマンションの建設が進んでおり、都心からの移住者も増えています。また市内には大学が多く、学生向けの賃貸需要も安定しています。 - 神奈川県相模原市
市内全体で上昇傾向にありますが、特に橋本駅周辺の上昇が顕著です。橋本駅は、JR横浜線と京王線が乗り入れており、都心へのアクセスも良いだけでなく、リニア中央新幹線の新駅の設置が決定しており、将来的な交通利便性の向上が強く期待されています。
さらに、相模原駅周辺では米軍跡地の再開発計画も進んでいることから、今後地価が上昇していくことが予想されます。 - 千葉県松戸市
松戸駅は、JR常磐線や新京成電鉄が乗り入れ、特に常磐線快速は東京駅への直通運転もしており、都心へのアクセスが大変便利で、駅周辺は高い上昇率を示しています。
また、都心に比べて地価や家賃が手頃で、商業施設や公共サービスが充実していることや、タワーマンションの建設やビルの建て替えも進み、ファミリー層・単身者ともに人気となっています。
このように、都心へのアクセスが良く、再開発による利便性の向上、そして手頃な価格帯の住環境が地価を押し上げる要因となっています。
これらの首都圏郊外の主要エリアは、都心部の路線価上昇に比べると上昇率は穏やかですが、その分、中長期的かつ堅実にインカムゲインを狙うエリアとして不動産投資家にとって非常に魅力的な特性を持っていると考えています。
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ミクロな視点で、持続的な賃貸需要エリアを見極めよう

路線価が全国平均で上昇してきたことは日本経済に明るい兆しですが、不動産投資においてはこの「平均値」はあくまで参考情報の1つに過ぎません。事実、バブル崩壊以降、地価がほとんど上がっていない、あるいは下落が続く地方も数多く存在しています。
国際観光地や大規模プロジェクトエリアは、高いリターンが期待できる反面、外的な要因による下落リスクも持ち合わせています。また、都心部は不動産価格が高騰し利回りが出にくいのが現状です。
一方、首都圏郊外の主要都市は、安定した賃貸需要と、再開発による緩やかな資産価値の向上を同時に期待でき、バランスの取れた投資対象です。賃料収入を重視したインカムゲイン投資に適しており、不動産投資ポートフォリオの中核を担う、堅実な選択肢と言えるでしょう。
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