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コラム#148 耐震補強工事が「正当事由」として認められない?!地震大国・日本が直面する不動産パラドックス

筆者

高桑 良充

KAIROS MARKETING LTD. CEO

国土面積が世界のわずか0.25%にも満たないにも関わらず、マグニチュード6以上の地震発生回数がなんと世界の17.9%を占める地震大国、日本。
そんな日本において、不動産投資で物件を保有するオーナーにとっては、有事の際に建物が倒壊しないよう耐震補強に取り組むのは、安全性の観点からはもちろんのこと、資産を守るという意味においても、非常に重要になってきます。
場合によっては、耐震補強工事のためにいったん賃借人に立ち退いてもらい、工事を優先したほうがよいケースも有り得るでしょう。
ところが、この「老朽化に伴う耐震補強工事」が、貸主が賃貸借契約の解約を申し入れるために必要な条件である「正当事由」として認められない事例もあるのだとか。
一体、そこにはどんな背景があるのでしょうか?

耐震補強の対象となるのは、新耐震基準と同程度の耐震性能を有しない物件

そもそも、耐震補強が必要かどうかを判断するためには、地震力に対する建物の強さ、耐震性能について知る必要があります。
1981年に改正された建築基準法の耐震基準(『新耐震基準』)では、中規模の地震動(震度5強程度)ではほとんど損傷せず、大規模の地震動(震度6強~7に達する程度)で倒壊・崩壊しないように設計するように定められています。
一方、改正前の旧基準では、新耐震基準より耐震性能が不十分でも基準を満たしている建物があるため、建物の耐震改修の促進に関する法律(『耐震改修促進法』)により、一定の指標以下の建物に対して耐震補強工事を行うことで、一定の耐震性能を備えることを努力義務としています。
つまり、旧基準時代に建てられた建物のうち、新耐震基準と同程度の耐震性能を有しないものが耐震補強の対象となります。

いつ起こるかわからない地震のための対策を積極的に正当事由に認められない、という現実

翻って、賃貸借契約の解約の正当事由として認められる条件とは、主に5つに大別されます。

  • 貸主自身が居住し、または営業する必要がある
  • 貸主の親族または従業員が使用する必要がある
  • やむを得ず生計のために売却する必要がある
  • 借家の大修繕あるいは取り壊しの必要性がある
  • 貸主が立退料を提供したとき

リストアップしてみると、耐震補強工事は「借家の大修繕あるいは取り壊しの必要性がある」などが該当するように見えます。
ところが、ひとたび裁判となると、耐震性能が不足していると判断された場合であっても、どの程度の規模の地震がいつどこで起きるのかについては、将来の予測に関する事項であるため、耐震診断の数値だけに依拠して正当事由として認めることには消極的なのです。
より実質的に耐震性能の著しい不足や、ひび割れ・変形・老朽化などによって構造的な欠陥が生じている場合などではない限り、ただちに建て替えが必要なほどの状態ではない、という判断を下しているのです。
そればかりか、むしろ耐震補強工事に要する費用や、その工事にかかる費用(テナントに支払うべき休業補償)および耐震補強工事をした後の建物の使用勝手を検討して、社会経済的に建て替えのほうが合理性がある場合は、「補強ではなく、建て替えなら正当事由として肯定する」というパターンすらあるようです。

築古物件だからこそ、出口戦略まで視野に入れた事業としてのマネジメントが肝要

では、オーナーが物件という資産の価値を毀損しないためには、どのように物件を見極めればよいのでしょうか?
たとえば旧基準、もしくはそれに近い年代の建物の場合、万が一建物が倒壊してしまったときの解体費、その後の土地の価格についても勘案しておいたほうがよいでしょう。
とくに解体に数千万以上かかる場合は、収支のバランス的にも注意が必要です。

新耐震基準の鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合も、建物にひび割れや亀裂(クラック)や漏水の跡がないかなど、建物自身の基本的な性能の低下がないかを把握しておきたいものです。
いずれにせよ、物件を取得する前に、その物件が最終的にどのように推移していくのかを想定し、その物件の「出口」を検証した上で不動産投資をスタートすることが肝要です。

カイロスマーケティングでは不動産投資のご相談を受け付けております。
投資に対してお持ちの不安や疑問を、私たちと一緒に解決していきましょう。

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