昨年、東京の新築マンションの平均価格が1億円を超えたことが話題になりました。日本の都市部の不動産価格は依然として上昇傾向にあります。住宅ローンの低金利、円安、ウッドショックなどが大きな要因ですが、加えてインバウンド(訪日外国人観光客)の増加も日本の不動産市場に多大な影響を与えています。
日本政府観光局によると、訪日外国人旅行者数は過去最高ペースで増加しており、2024年10月には331万2000人と、単月として過去最高を記録、統計開始以来最速で年間累計3000万人を突破しました。これまでの年間訪日外国人旅行者数の過去最高が、2019年の3188万人ですから、2024年通年では、この記録を大幅に更新する見通しです。
インバウンド増加による日本の不動産市場への影響
インバウンドの増加に伴い、都市部や観光地では観光客向けの宿泊施設や店舗の需要が急増しています。特に都市部や観光地では、民泊(短期賃貸)の需要が増え、投資用物件として注目されており、また商業用の不動産やレジャー施設も投資先の候補として検討されるなど、不動産の価値が向上しています。
訪日の機会が増えることで、多くの外国人が日本の魅力を直接体験でき、訪日中に物件の内見ができることも、購入の決定を後押ししているようです。
6年連続地価上昇率No.1で 注目を集めたニセコの不動産市場
世界屈指のパウダースノーを誇るスキーリゾートとして有名な北海道のニセコは、インバウンドの増加により急成長しており、富裕層向けの高級物件需要が高まっているエリアとして一躍有名になりました。高級ホテルやリゾート施設の開発、サービスやインフラの整備が進み、急激に地価が上昇しており、不動産価格のさらなる上昇を見込んで、キャピタルゲイン目的の投資先として注目が集まっています。2024年3月に発表された公示地価では、同じく北海道の富良野市が地価上昇率(住宅地)No.1になるなど、インバウンド需要が不動産価格に影響をもたらしていることが伺えます。
しかし、すでに不動産価格が高騰している市場で、更に大幅な値上がりを期待することには慎重になった方が良いでしょう。新しいリゾート施設や観光地の開発が進むと、一時的な不動産価格の上昇は期待できるかもしれませんが、世界的な経済不況や新型コロナウイルスのようなパンデミックが起これば、一気に需要が冷え込むことも考えられます。またリゾート系の不動産は市場が限定されることも多く、売却時に買い手が見つからないケースもあるため、流動性の低さは懸念材料になるでしょう。
このように、ニセコのようなリゾート向け不動産市場は需要が安定している場合は高いリターンを得られる可能性がある一方で、市場の不安定性などのリスクを伴うので、短期的に大きなキャピタルゲインを狙うには不確定要素が多い投資です。
外国人投資家からみた日本の不動産市場
日本はアジアで最も魅力的な不動産市場
APAC(アジア太平洋)の投資家へのアンケート調査で、「最も魅力的な投資先」に5年連続で日本が選ばれており、(出典:CBRE「アジア太平洋地域2024投資家意識調査」)多くの外国人投資家が日本の不動産市場に注目しています。
その理由は以下の4つです。
- 外国人の不動産保有について規制がない
他国では、外国人が不動産を購入する際に規制や追加課税が設けられていることが多いです。例えば中国では土地は国家が所有しており、外国人はもちろん、国民であっても購入や個人所有は認められていません。シンガポールでは外国人による土地の購入や所有が禁止され、東南アジア諸国でも外国人の不動産購入には制限が設けられている場合が多いです。しかし、日本にはそのような規制がほとんどなく、外国人も日本人と同等に近い条件で不動産を購入することができます。 - 安くて高利回り
日本では東京のマンション価格の上昇が話題となっていますが、それでも他国の主要都市と比較すると相対的に価格が安く、かつ高い利回りを期待できる点が魅力です。ニューヨークやロンドン、シンガポールなどの主要都市では不動産価格が非常に高く、投資の初期コストも大きくなりがちです。しかし、東京では比較的手頃な価格で優良物件が購入できるため、投資効率が高いと言えます。 - 安定と安心
日本は他国に比べて政治的・経済的安定性が高く、投資に対する不確実性が少ない国として評価されています。自然災害に対する対策や建築基準も厳しく、安全性が高い物件が多いことも、外国人投資家にとって魅力として捉えられています。 - 円安
昨今の円安相場も、外国人投資家の不動産購入を後押ししています。また日本銀行の政策金利が今後上昇することを見越し、将来的に円が回復した際に購入した物件を売却し、為替差益と不動産のキャピタルゲインを同時に狙う戦略も可能です。
賃貸物件の外国人入居のハードル
インバウンドの増加に伴い、外国人労働者や留学生も増加し、日本の在住外国人数が約340万人と過去最多になりました(出典:出入国在留管理庁 令和6年3月22日報道発表資料)。
在住外国人の増加に伴って問題になっているのは、日本の賃貸物件における外国人入居のハードルの高さです。在住外国人が日本で賃貸物件を契約する際には多数のハードルがあります。
- 言葉の壁
日本の賃貸契約のほとんどは日本語で行われるため、日本語に不慣れな外国人にとっては契約内容の理解が困難です。契約書や重要な説明書類がすべて日本語で書かれていることが一般的であり、誤解やトラブルのリスクが高まります。また、日常のコミュニケーションにおいても、不動産業者やオーナーとの意思疎通がスムーズにいかない場合があります。 - 敷金・礼金などの文化の違い
日本の賃貸市場には、外国人にとって馴染みのない独自の慣習や文化があります。例えば礼金や敷金といった制度は、日本に住んだ経験がない外国人には理解しにくいようです。また契約更新時や退去時の手続きにも日本独自のルールがあり、これらが外国人にとって賃貸物件を借りる際の障害となっています。
- 保証人の必要性
日本では賃貸契約を結ぶ際に保証人が必要とされることが一般的です。しかし、外国人が日本で信頼できる保証人を見つけるのは容易ではなく、保証人が見つからないために契約が成立しないケースも多く見受けられます。
- 家具付き物件の少なさ
日本の賃貸物件は、家具や家電がついていないことが多いため、短期滞在者や留学生にとっては初期費用がかさみがちです。家具付き物件が少ないことが、外国人にとって物件選びを難しくする一因となっています。
- 外国人というだけで入居拒否も
一部の不動産業者やオーナーが、国籍だけを理由に外国人の入居を拒否することがあり問題になっています。この問題は、外国人が日本で生活を始めるにあたって大きな障害になっています。
不動産業者やオーナーが外国人の入居を拒否する理由の多くは、言葉の壁と文化の違いによるトラブルへの不安からです。契約書や説明書類がすべて日本語で書かれているため、外国人入居者が内容を理解できず、契約違反や物件の損壊などが起こった事例や、ゴミの分別や騒音などの生活ルールに外国人が馴染めず、他の入居者からのクレームにつながったという事例は実際に多くあるので、現状のシステムだと、物件オーナーが不安を抱えてしまうのも仕方がないと言える部分もあります。
カイロスAIが提供するサービス - 外国人向け賃貸・生活サポートサービス「RENTOKYO」
在住外国人が日本で居住する際に抱える問題を解決するためには、不動産業界全体での多言語対応の強化や、外国人専用の保証サービスの提供などが必要です。
カイロスAIでは、訪日外国人向けの賃貸・生活サポートサービス「RENTOKYO」を提供しています。住まい探しにとどまらず、AIを活用した与信審査、家具家電の手配、インフラの整備までサポートし、外国人が物件を借りる際の問題に寄り添うサービスです。
物件の選定、審査、契約をすべてWeb上で行えるので、来日せずに日本での住まいを整えることができます。
空室を避けたい賃貸物件のオーナーにとっても、本来、入居者になり得る在住外国人の増加はメリットです。このサービスは外国人入居者を受け入れられる際のオーナーのリスクと不安の軽減にも繋がります。
日本の不動産市場の未来
訪日外国人、在住外国人が増えることによって、日本の不動産市場への需要は引き続き増加すると考えられます。不動産投資の面で見ると、日本の市場には多くの魅力があり、インバウンドによって価格が上昇している場所もあります。しかしキャピタルゲインを狙った投資には不確定要素が多くリスクを伴うので、リスクを最小限にしながら中長期的に安定した資産形成を目指すのであれば、安定的に需要が見込める投資エリアの見極めが重要です。
賃貸物件においては、少子高齢化で日本人の人口減少が続く一方で、今後はますます在住外国人向けの需要が高まっていくと考えられます。賃貸物件のオーナーにとっても、入居希望者の増加は大きなメリットです。在住外国人と物件オーナーの双方が、ストレスや不安なく、賃貸物件を契約し住まうことができる環境を作っていくことが、日本の不動産市場のさらなる活性化に繋がっていくでしょう。