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コラム#57 アパート経営において減価償却が重要な理由とは?計算方法や注意点を解説

筆者

高桑 良充

KAIROS MARKETING LTD. CEO

アパート経営をうまく進めるには減価償却に関する理解が欠かせません。しかし、減価償却は仕組みや計算方法が複雑で慣れない方には難しいものです。
本記事では、減価償却の仕組みや計算方法・注意点を分かりやすく解説します。
本記事を参考に、減価償却の理解を深めてアパート経営に役立ててください。

1不動産投資は減価償却が超重要!その理由は?

「アパート経営で節税できる」ということを耳にされた方もいらっしゃるでしょう。この節税のために重要なのが「減価償却」という仕組みです。
減価償却は、実際の出費を伴わない経費であり、そのことが節税に大きく関わってきます。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得にかかった費用を数年間に渡り按分して計上する会計上の処理のことを言います。
建物などの固定資産は、取得した年にその取得にかかった費用を一括で経費計上するわけではありません。
例えば、1,000万円の建物を購入した場合、この1,000万円は10年間に渡って毎年100万円ずつ費用として計上するといったことが可能なのです。

建物などの固定資産は、時間が経過するとその価値が減少していくといえるでしょう。そのため、その減少していく価値を費用として計上するために減価償却があるのです。

損益通算による所得圧縮で大きな節税効果

アパート経営で得た収入から必要経費を差し引いたものが、不動産所得となります。不動産所得は、総合課税の対象であり損益通算が可能です。
総合所得とは、給与所得などの他の所得と合算した額が、課税対象額となる所得のことを言います。
例えば、給与で年収400万円あり不動産所得で利益が300万円ある場合は、合計の700万円が課税対象となるのです。
しかし、不動産投資は必ずしも収益が出るわけではありません。
利益が出ずに赤字となってしまう年もあるでしょう。
ここで、重要なのが不動産所得は損益通算できるということです。
損益通算とは、赤字の所得を他の黒字の所得から差し引いて申告できる制度のことを言います。給与で年収400万円あり不動産投資で300万円の赤字の場合、黒字と赤字を相殺した100万円を申告すればいいのです。

サラリーマンなど会社から給与を得ている場合、不動産投資で損失が出た分を給与所得から差し引くことで、課税対象の所得額が抑えられます
その結果、所得税や住民税の還付を受けられるようになり節税につながるのです。

減価償却の結果赤字になっても問題ない

損益通算で相殺するためには、不動産所得が赤字となる必要があります。
実際に、家賃収入などが得られず赤字となるのは投資としては問題があるでしょう。しかし、減価償却を上手に使うことで実際は黒字でも赤字として申告できるのです。

先述した通り、減価償却は損失した価値を費用計上するため、実際の出費は伴いません。
出費の伴わない経費を計上することで、会計上は赤字でも手元にはお金が残っている状態となるのです。

「赤字経営で申告すると金融機関で融資をもらえなくなるのでは」と思う方もいらっしゃるでしょう。
基本的に金融機関は、減価償却前のキャッシュフローを重要視しているため、減価償却の結果が赤字となっても大きな影響はないものです。

減価償却の仕組みを上手に活用することで、利益を出しながらも課税額を抑え、節税効果を得られるようになるでしょう。

減価償却の計算方法

減価償却を多く計上することで、節税効果はより大きくなるものです。そのため、減価償却の計算方法を理解しておくことが重要となります。

減価償却期間の算出方法

減価償却を経費計上できる期間を決めるのに重要なのが「法定耐用年数」です。
法定耐用年数とは、法律によって定められている建物が使用できる期間のことをいいます。
その期間は、建物の目的や構造により異なり、主なものは次のとおりです。

構造

耐用年数

木造・合成樹脂造のもの

22

木造モルタル造のもの

20

鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの

47

れんが造・石造・ブロック造のもの

38

この法定耐用年数をもとに減価償却期間を算出します。

【新築の場合】
新築物件の場合は、この法定耐用年数がそのまま減価償却期間となります。
例えば、木造アパートを購入した場合は、その期間は22年となるのです。

【中古の場合】
中古物件の場合、築年数が法定耐用年数を超えているのか超えていないのかで、算出方法が異なります。
まず、築年数が法定耐用年数を超えていない場合の算出方法は次のとおりです。

減価償却期間:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20
例えば、築30年の鉄筋造りの場合
47年-30年)+30×20%=23年となるのです。

築年数が法定耐用年数を超えている場合は次のとおりです。
減価償却期間:法定耐用年数×20
よって、築年数50年の鉄筋造りアパートの場合
47×20%9年となります。

減価償却期間が短ければ、それだけ1年で計上できる費用が大きくなりより節税効果が見込めるものです。
節税を狙っているのであれば、法定耐用年数を超えた物件を検討するのも一つの手といえるでしょう。

減価償却を経費計上できる期間を決めるのに重要なのが「法定耐用年数」です。
法定耐用年数とは、法律によって定められている建物が使用できる期間のことをいいます。
その期間は、建物の目的や構造により異なり、主なものは次のとおりです。

減価償却できるのは建物部分のみ

減価償却を計算するうえで注意しなければいけないのが、減価償却が適用されるのは建物のみという点です。
土地は年数が経過しても価値が減少しない資産といえるため、減価償却が適用できません。
不動産投資用の物件を購入する際には、購入金額のうち建物と土地の価格がどれだけなのかに注意する必要があるのです。

建物と土地の比率の違いによる減価償却について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

【税額シミュレーション】アパートの減価償却でどのくらい節税できる?

ここでは、減価償却を利用してどれだけ節税できるのがシミュレーションしていきます。

新築鉄骨造/物件価格1億円/利回り10%のアパート

まずは、以下の条件で物件を購入した場合のシミュレーションです。
・新築鉄骨造
・物件価格:1億円
・利回り10%(不動産所得 1,000万円)
・年間経費:不動産所得の20%(200万円)

上記の条件で減価償却しない場合の不動産所得は以下のようになります。
1,000万円(不動産所得)-200万円(年間経費)=800万円
よって、800万円が課税対象となります。

ちなみに、800万円に対しての税金は次のとおりです。
所得税:800万円(課税対象額)×23%(税率)-63.6万円(所得税控除)=120.4万円
住民税:800万円×10%(税率)=80万円
そのため120.4万円+80万円=200.4万円を納税しなければいけないのです。

一方、上記の条件で減価償却した場合は次のとおりです。
減価償却期間:47年間
減価償却額:1億円×0.022(償却率)=220万円/
毎年220万円を47年間に渡って経費計上できます。
減価償却を計上した場合の、不動産所得は次のとおりです。
1,000万円(不動産所得)-200万円(年間経費)-220万円(減価償却)=580万円

580万円が課税対象となり、その税額は次のようになります。
所得税:580万円×20%(税率)-42.75万円=73.25万円
住民税:580万円×10%(税率)=58万円

減価償却をした場合、73.25万円+58万円=131.25万円の納税となり、減価償却しない場合より大きく抑えられるのです。

築20年木造/物件価格5,000万円/利回り3%のアパート

次に、中古物件を購入し給与所得がある場合をシミュレーションしてみましょう。
条件は以下のとおりです。
・築20年木造
・物件価格:5,000万円
・利回り3%(不動産所得 150万円)
・年間経費:不動産所得の20%(30万円)
・給与所得として年収500万円

まずは、減価償却期間と額を算出します。
償却期間は法定耐用年数22年に対して築20年が経過しているので、次のように算出できます。
22年(法定耐用年数)-20年(経過年数))+20年(経過年数)×20%=6

減価償却額は次のとおりです。
5,000万円(購入価格)×0.046(償却率)=230万円
よって、毎年230万円を6年間に渡って計上できます。

減価償却を計上したうえでの不動産所得は次のとおりです。
150万円(不動産所得)-30万円(年間経費)-230万円(減価償却)=-110万円

ちなみに、給与所得500万円だけの場合の納税額は以下のようになります。
所得税:500万円×20%(税率)-42.75万円=57.25万円
住民税:500万円×10%(税率)=50万円
そのため、57.25万円+50万円=107.25万円納税しなければなりません。

ここで、不動産所得の赤字と損益通算すると次のようになります。
500万円(給与所得)-110万円(不動産所得損失)=390万円
課税対象額が390万円となり、納税額は次のとおりです。
所得税:390万円×20%(税率)-42.75万円=35.25万円
住民税:390万円×10%(税率)=39万円

納税額は35.25万円+39万円=74.25万円となり、損益通算しない場合に比べ大きく納税額を減らせるのです。

減価償却すると売却時の税金が高くなる点に注意

減価償却では、所得税などの節税メリットがある反面、売却時に納める税金が高くなることに注意が必要です。
不動産の売却時には、売却利益である譲渡所得に対して税金が課せられます。

譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
課税譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除
このうち、取得費にあたる部分は減価償却費用を差し引いた金額となります。
例えば、5,000万円で購入した築20年の木造アパートを5年間所有し5000万円・譲渡費用50万円で売却したとしましょう。
一見すると、5,000万円で購入したものを5,000万円で売却したので利益は0円のように見えます。

しかし、取得費はそれまで計上した減価償却費用を差し引くので次のようになります。
計上した減価償却費用:5,000万円×0.046(償却率)×5年間=1,150万円
取得費用:5,000万円-1,150万円=3,850万円
課税譲渡所得:5,000万円(売却額)-3,850万円(取得費)-50万円(譲渡費用)-50万円(控除)=1,050万円

よって、利益が出ていないのに1,050万円が課税対象となってしまうのです。

ちなみに、譲渡所得税は物件を所有している期間により税率が異なり、以下のようになります。

 

所有期間

所得税

住民税

復興特別所得税

税率合計

短期譲渡所得

5年以下

30%

9%

0.63%

39.63%

長期譲渡所得

5年超え

15%

5%

0.315%

20.315%

今回は5年間所得していたので、譲渡所得税は以下のとおりです。
1,050万円×20.315%=約213.3万円
このように、物件を所有中に減価償却費用を計上すると、所得税の節税はできますが、売却時に多くの税金を納めなければなりません。

売却時の納税を考慮し、上手に減価償却費用を活用できるようにしましょう。

まとめ

アパート経営で重要となる減価償却の計算法や注意点についてお伝えしました。減価償却費は、実際の出費を伴わない経費のため上手に活用することで、黒字経営でも赤字申告でき所得税などの節税効果があるものです。
しかし、減価償却費用を計上した分売却時には大きな納税の負担が課せられる可能性もあります。

減価償却を理解することで不動産投資成功の近道となるでしょう。
この記事を参考に、減価償却の仕組みを理解し上手に活用できるようにしてください。

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